急性の放射線障害

それでは、放射線の怖さはどのようなものでしょうか?

放射線の障害は、急性効果と晩発効果とがあります。

急性効果 は、一度に大量の放射線を浴びたとき、数週間以内に現れるものです。人体は放射線に対する防護機構がそなわっているので、少しの放射線の照射では、放射線による細胞レベルの破壊は修復されたり回りの健康な細胞に置き換わられたりして、保護されます。しかし一度に大量の放射線があたると、修復・防護機構が追いつかず、組織や臓器に障害が現れます。

200〜250ミリシーベルトの照射では、急性の障害があるという臨床知見はありません。

1シーベルトでは、放射線病の自覚症状が現れ、吐き気や倦怠感がありますが、死亡することは多くありません。

2,3シーベルトの放射線を浴びると生殖器官が侵されます。

4シーベルト浴びると、半数の人が死亡し、5シーベルトあびると、白内障にかかります。10シーベルト以上を全身に浴びるとほとんど死亡します。

しかし、癌などを放射線で治療する場合には、癌の近くの局所を60シーベルトも照射します。このような場合には、放射線を浴びる危険と癌が治る可能性を秤にかけて、どっちが得かを判断しなくてはなりません。


妊娠4ヶ月までのお腹の赤ちゃんには特別の配慮が必要 です。この時期の胎児は細胞分裂を活発に行っていて、器官や組織が成長している時期なので、放射線に対して特別に感受性が高いのです。この時期の胎児に一度に 50 ミリシーベルトの放射線が照射されると、1000人に5人の割合で奇形が生ずると云われています。妊娠初期の妊婦が放射線診断を受ける際には十分注意するように云われているのは、このためです。しかし放射線量が50ミリシーベルトに達しない場合には、奇形や知恵遅れなどの障害が現れることはありません。

次のページへ