放射線・金属などの毒作用と人工物質の毒作用との違い

人間を含む生物は、長い進化の過程で、常に放射線に曝されてきました。生命が芽生えた頃は今よりもっと放射線が強かったでしょう。そのような環境では、放射線に対する抵抗力を持ったものが生き延びてこれたのです。生物は放射線に対する抵抗性をも獲得してきただけでなく、放射線による刺激を必要とするようにもなったのかもしれません。

一方、最近、PCBダイオキシンなどの人工の物質や薬品が生物のホルモン活動を妨げて、生殖機能に著しい影響を与えることが知られてきました。このような人工物質は、極めて僅かでも悪い効果をもたらすという特徴があり、微量金属や放射線とは毒物としての挙動が全く異なっています。微量の金属や放射線については、生物の身体は長いつきあいの中でどのように防御し、或いは使うかを学習してきたのですが、PCBやダイオキシンは生物には経験の無い物質なので、それらに対する防御機能が備わっていないのだと考えられます。

人工の物質が生物の、特に生殖活動時のホルモン活動を妨害して、深刻な影響を与えつつある実体をレポートした本(1996年出版)。題名の和訳は「私たちの盗まれた未来」。



(これで 1.6 人体への放射線の影響 は終わりです)

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