突然変異誘発(放射線育種)

生き物の進化の過程で、放射線が重要な役割を果たしていたであろうことは既にお話ししましたね。ヒトを含む生物は、放射線の申し子であると云っても過言ではないでしょう。放射線が突然変異を誘発することを積極的に利用することも現代の技術の一つになっています。これによって、病気に強い穀物や果物に品種改良したり、変わった品種を作りだしたりするのです。

“二十世紀”という名前の梨は“長十郎”などとともに甘さとみずみずしさがあっておいしい梨ですが、黒斑病にかかりやすいので、手入れが大変で農薬も大量に使わなくてはならないという難点がありました。これに放射線照射によって突然変異を起こさせて、その中から黒斑病にかかりにくい品種を選び出したのが“ゴールド二十世紀”という名前の梨です。“ゴールド二十世紀”は果物としての優れた性質はそのままに、病気に強いという特性だけを獲得した訳です。同じように「新水」という名前の青なしから黒斑病に強い品種を放射線育種で作られて「寿新水」と名付けられています。

また、”いちひめ”という名前の大豆は、放射線育種の手法を用いて大豆から青臭さを取り除かれた品種です。このような放射線によって品種改良されたものとしては、稲では”レイメイ”や”アキヒカリ”などが有名ですが、麦、トマト、レタス、リンゴ、サトウキビ、エノキタケなど、数え切れない品種に及んで行われています。私たちが食べている多くの作物は、放射線による品種改良を経ているものが意外と多いのです。

また、皆さんは花屋に行くと、キク、バラ、サツキ、ベゴニアなどでも形や色が違った品種がたくさんあり、覚えきれないほど色々な名前がついていることに気がつくことでしょう。変わった模様の観葉植物などもたくさんあります。

このように多様な品が放射線照射で変異を誘発させて開発されているのです。

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上記2つの図は、「放射線と産業」(放射線利用振興協会)および放射線育種場(農林水産省・農業生物資源研究所、茨城県那珂郡大宮市町)パンフレットから引用しました。