研究成果名

悪性脳腫瘍に対する熱外中性子による中性子捕捉療法のための
基礎的・臨床的研究

研究成果の概要

悪性脳腫瘍の治療成績はこれまで大きな改善がみられず、難治性の腫瘍である。悪性脳腫瘍は放射線抵抗性であり、化学療法にも著効をしめさない。よって通常の放射線では治癒しえないが、腫瘍細胞を選択的に生物学的効果の高い粒子線にて治療できる可能性のある本治療法は効果の期待できる治療法である。新しく整備されたJRR-4を用いて、より深部への治療効果を狙った熱外中性子による中性子捕捉療法に関しての基礎的・臨床的研究を行っている。臨床治験としてはJRR-4における混合熱中性子モードを用いたホウ素中性子捕捉療法を平成11年10月より開始し、すでに2例照射し、11年度中には合計5例の臨床治験が行なわれる。今後、さらに熱外中性子を用いた臨床治験に取り組んで行く予定である。

研究成果の国民生活・経済への寄与の内容

難治性悪性脳腫瘍の治療成績を向上させることは国民生活へ大きく寄与する。さらには原子炉を用いたガン治療は原子力に対する国民感情の改善にもつながると考えられる。本治療法はきわめてエネルギーの低い熱中性子を用いて腫瘍選択的な治療を行う方法であり、他の放射線治療と比べてQuality of Life (QOL)に貢献できることが期待される。この点も国民の医療に大きく寄与できるものと考えられる。

成果に関する国際的な評価

本施設による臨床研究は各新聞にも取り上げられ、話題になった(読売、日刊工業、東京、茨城新聞など)。また雑誌社の取材もあった(原子炉で脳腫瘍治療。原子力eye 45(8) :65-67、1999など)。

学術方面では文部省科学研究費の地域連携研究により平成11年度より3年間の研究がスタートし、初年度には1100万円が配分された。これまでの一連の研究成果により第20回がん集学的治療研究財団・一般助成研究(1999.12.10、テーマ:熱外中性子線を利用した悪性脳腫瘍の中性子捕捉療法;α粒子線治療、150万円)を受賞

その他

原研施設利用共同研究。

(研究代表者:松村 明 筑波大学)