研究成果名

ポジトロニウムを用いたポリマーの自由空間構造の評価法開発

研究成果の概要

ポリマー等絶縁材料の実用的な性質を決定するのに大きな役割を果たしている「自由空間」は、原子の大きさと同じ程度なので、実測する手段がこれまで無かった。最近、ポジトロニウムを用いる方法に期待が寄せられている。これは、物質に陽電子を注入すると、陽電子が電子一つと結合してポジトロニウムと呼ばれる小さな粒子となって自由空間に入り込み、その大きさに応じた寿命で消滅することを利用するものである。これは原理的にも魅力があり、他に方法が無いこともあって世界的に熱心な研究が行われている。

しかしこの方法には、ポジトロニウムという特異な粒子の性質に関連した基本的な問題があり、それを解明しないと誤って用いる可能性もある。

本研究はその点を注意深く検討し、この手法の信頼性を高めるようにしたものである。

研究成果の国民生活・経済への寄与の内容

コンタクトレンズの水や酸素の透過性、ペットボトルの気密性、種々のプラスチックスの機械的強度など、ポリマーの多くの実用的な性質を決める重要な要因の一つが「自由空間」である。この自由空間を正しく評価する方法が産業界で求められており、本方法は直接これに応えるものである。

実際、本研究についての産業界研究所の関心が高く、この研究課題による原子力研究総合センターへの共同研究申し込みが平成11年度から増えている。

成果に関する国際的な評価

この研究に基づいて、国際会議で3回の招待講演を行っている。

また、平成11年夏にはアメリカの大学から大学院学生が短期に訪れて研究手法を学んでいった(文部省・若手外国人研究者短期研究プログラム)。平成12年夏には同じプログラムによって、ドイツから大学院学生が来訪する予定である。

その他

全国共同研究部門

(研究代表者:伊藤泰男 東京大学・原子力研究総合センター)