研究成果名

我が国の石英粒子から赤色を示す熱ルミネッセンス特性を有するものがあることを世界で最初に発見し、赤色熱ルミネッセンスを用いて日本の旧石器関連地層の絶対年代を約50万年と評価

研究成果の概要

放射線が白色鉱物に作用した際に観測される放射線誘起ルミネッセンス現象の特性・機構解明と利用にあたって、放射線照射物質の加熱に伴う発光現象である熱ルミネッセンス(thermoluminescence, TLと略記)現象に取り組んだ。簡便なTLカラ−写真(TLCI)観察法の開発と基礎研究に適したTL測定器を光計数装置とパソコンを組合せ高い性能を有する測定器を自作し、従来は青色TLのみと考えられていた石英粒子に、赤色TL(RTL)特性を有する粒子が存在することを世界に先駆けて発見し。このRTL石英の特性などをESR(電子スピン共鳴吸収)・IRスペクトルや放射化分析と組み合わせて追究してきた。その結果、石英に含まれるAlとともに水酸基不純物が放射線誘起現象特性を大きく左右しており、RTL石英には高温からの急冷が関わっていることを明らかにし、RTL石英粒子が火山活動が活発な本邦に多いことを説明できた。石英粒子からのRTL関連の発光源の寿命が100万年以上と長く、かつ良好な線量応答性有することを実験的に見出し、第四紀や考古遺物・遺跡の絶対年代測定にRTL観測が適していることを見出した。このRTL年代測定法を、ナウマンゾウ化石骨・旧石器関連地層や縄文土器・須恵器・江戸以降の陶磁器片や窯跡等に適用し、実年代を評価してきた。

研究成果の国民生活・経済への寄与の内容

日本の先史時代を探る上で、自然科学的な手法での絶対年代評価が決め手となることが多い。近年、我が国で50万年まで遡ると考えられている旧石器遺跡が相次いで発掘され話題になってきている。これらの遺跡調査結果に客観性や信頼度を高めるのが我々の開発して来ている 赤色熱ルミネッセンス年代測定法 だと考えている。

成果に関する国際的な評価

○石英粒子からの赤色域熱蛍光測定による旧石器関連地層の年代測定について

  橋本哲夫・小嶋素志・坂井 正, 考古学と自然科学, 23, 13-25(1990).

○石英粒子からの熱ルミネッセンス観測による窯遺跡の被熱温度推定

  橋本哲夫、小西正芳、高橋英史、市野正廣, 考古学と自然科学、30, 11-22 (1994).

○高森遺跡関連テフラ・火砕流層からの石英粗粒子を用いた赤色熱ルミネッセンス(RTL)年代測定

  橋本哲夫・能登屋 信・小村和久・白井更知, 考古学と自然科学、33, 1-15 (1996).

○陶磁器片からの熱ルミネッセンスカラー画像と赤色熱ルミネッセンス(RTL)年代測定への試み

  橋本哲夫・真柄美和・西山笑子, Radioisotopes, 48, 661-670 (1999)

○2)さまざまな年代測定・判定法 (6)ルミネッセンス法, 橋本哲夫, シリーズ「考古学と自然科学」第四巻年代測定学・地球科学,(株)同成社, pp. 84-98 (1999)

○天然石英・長石類からの放射線誘起ルミネッセンス

  橋本哲夫, Radioisotopes,48 555-556 (1999)

○赤色TLによる年代測定, 橋本哲夫, 地球, 26, 119-124 (1999).

○考古遺物のルミネッセンス年代測定, 橋本哲夫, SUT BULLETIN(東京理科大科学教養誌)1 14-18 (2000)

その他

原研施設利用共同研究および立教炉利用共同研究

(研究代表者:橋本哲夫 新潟大学)