研究成果名

中性子線およびポジトロン放出核種による生きている
植物試料の水分の可視化

研究成果の概要

今まで可視化が困難であり、かつ解析が殆ど行われていなかった、植物地上部、種子ならびに土壌中の根および根近傍の水分動態を初めて可視化させ解析した。

研究成果の国民生活・経済への寄与の内容

生きている植物試料中の水分の可視化は今まで殆ど行われてこなかっただけに応用範囲が極めて大きい。代表的な例を以下に示す。

1. 日本でよく材として用いられるスギは同種でも個体により心材部の水分量が異なり、水分量が多いほど乾燥後の残存水分量が多く、加工後の家や家具などに歪が生じてくるため、大きな問題となってきている。そのため、乾燥過程でいかに水分が材から減少していくかを初めて可視化たことはこれから各種の材を調製する上で重要な知見が得られることになる。

2. 現在種子の保存方法が検討されているが、保存法において最も重要な要素のひとつは保存後の発芽率が保存によりどう変化するかである。しかし、実際の発芽率を調べるためには何日かを要するが、種子中の水分吸収動態を可視化させることができたため、種子の保存方法の検討が短時間でわかることになった。また種子の休眠についても新しい知見が得られると予想される。

3. 根の極近傍の水分動態は根の活性を調べる上で非常に重要であるが、今まで実際の実験が困難だったことから殆ど報告されてこなかった。本手法により根の極近傍の水分動態の解析が初めて可能となったことは、根の生理の解明のみならず、土壌環境の変化に対して根がどのように反応するかを知る指標が得られたことになる。

4. 切り花をいかに長持ちさせるかは園芸分野の大きな研究課題のひとつである。本研究により切花中の水分変化の可視化が可能となったため、どのような条件下で花のどの部分から水分が失われていくかを初めて画像で解析することができるようになった。

成果に関する国際的な評価

1. Nakanishi,T.M. et al. Radioisotopes 44, 103-107, 1995

2. Nakanishi,T.M. et al. Bull. of the Tokyo Univ. Forests 93, 13-19, 1995

3. Nakanishi,T.M. et al. Fifth World Conference on Neutron Radiography, 716-719, 1997

4. Saito,K, Nakanishi,T.M. et al. Mokuzai Gakkaishi43(8), 669-677, 1997

5. Nakanishi,T.M. et al. Bioimages 5(2), 45-48, 1997

5. Nakanishi,T.M. et al. J.Plant Phys. 151, 442-445, 1997

6. Nakanishi,T.M. et al. Holzforschung, 52, 673-676, 1998

7. Nakanishi,T.M. Proc. of The 23rd Japan Conference on Radiation and Radioisotopes, pp1-18 1998

8. Nakanishi,T.M. et al. Nuclear Istruments and Methods in Physics Research A424,136-141,1999

9. Furukawa,J., Nakanishi,T.M. et al. Nuclear Istruments and Methods in Physics Research A 424, 116-121, 1999

11. Nakanishi,T.M. et al. J.Radioanal.Nucl.Chem. 242, 353-360 1999

12. Nakanishi,T.M. et al. J. Jpn. Soc. Soil Phys. 82, 29-33 1999

 [新聞・テレビなど] 

1. 朝日新聞掲載 平成10年2月25日

2. フジテレビ、ニュースジャパン 平成10年2月25日

3. NHK、試してガッテン 平成10年4月15日

その他

大学・原研プロジェクト共同研究

(研究代表者:中西友子 東京大学)