研究成果名

中性子・ガンマ線強度の位置分布の高分解能・高速測定法を
世界で初めて開発

研究成果の概要

中性子束やガンマ線強度の位置分布の情報は、原子炉や加速器の開発・運転において不可欠である。しかしこの情報を高分解能でかつ高速に得る方法は実質的にはなく、従来、多くの労力や時間を要した。

光ファイバーの先端に、シンチレータと中性子コンバータの混合物を1ミリメートル程度の大きさにして付着させた検出器を新しく作製し、この検出器を原子炉内あるいは加速器周辺を数分間で走査することにより、中性子束分布を1ミリメートル程度の非常に高い位置分解能で且つ高速で測定できる。中性子コンバータとして熱中性子に反応する核種を用いれば熱中性子束分布が得られ、高速中性子に反応する核種を用いれば高速中性子束分布が得られる。中性子コンバータを入れないでシンチレータのみを用いれば、ガンマ線の強度分布が得られる。

中性子束やガンマ線強度が弱い場合にはパルス計数法を用いることにより、また原子炉内のように強い場合には電流法が用いて高い精度の測定ができる。

研究成果の国民生活・経済への寄与の内容

今までに得られない高度で高い精度の情報が高速に得られるので、新しい原子炉等の開発に貢献でき、ひいては将来に渡るエネルギー問題を解決する手段を提供する助けとなる。これは我が国の国民生活に対しては極めて寄与が大きいと言える。

成果に関する国際的な評価

学術的国際会議において4回発表され、国際誌に4編掲載されている。

新しく開発されたこの測定法は、国内では、京大炉、東北大学等において用いられており、国外ではスエーデン、チェコ、米国において用いられている。

特に申請していないせいではあるが国際的な賞は受賞していない。国内では、応用物理学会放射線分科会放射線賞を受賞している。

その他

立教大学原子力研究所の原子炉や京都大学原子炉実験所の臨界集合体を用いて、多くの放射線計測研究者や原子炉研究者の共同研究による成果である。

(研究代表者:森千鶴夫 名古屋大学名誉教授)