UTNL-W-0002 Section 2.6

2. 研究活動
2.6 ブランケット運転管理部


(1) 構成
助教授      井口 哲夫
助手       吉井 康司

(2) 主な研究活動

核融合反応放射線場のキャラクタリゼーションに関する研究
  井口 哲夫
磁場及び慣性閉じ込め核融合反応プラズマより生成される放射線 (特に、中性子)場のキャラクタリゼーションとそれらをプラズ マ診断・制御に用いる手法の開発研究を行っている。昨年度は、 主として、
  1. 中性子発生プロファイル計測のための指向性中性子検出器につい て、新工夫(フィルター効果)による性能改善及び試作検出器による性能評価
  2. 高分解能 DT中性子スペクトロメータについて、検出器要素の 試作による性能評価と核融合実験炉搭載のための中性子遮蔽コ リメータの工学設計、などを行った。

量子ビームを用いた微量元素分析法の高度化と新応用に関する研究
  井口 哲夫
極微量核変換生成物、または同位体組成変化の超高感度検出によ るドシメトリー手法の開発を目的として、高速中性子科学研究設 備の中の波長可変レーザー3台及び飛行時間型質量分析計を組み 合わせたレーザー共鳴イオン化分光装置の整備を進めており、昨 年度は、Xeなどを対象とした核分裂生成ガスモニタリングの基礎 実験を完了して、気体試料分析システムとしての基本性能を確認した。
 また、荷電粒子ビーム反応で生成される二次的粒子の高分解能 スペクトロメトリーにより、物質内微量元素の定量やプロファイ ル推定を行う技術の高度化として、昨年度は、
  1. 二次γ(X)線スペクトロメトリーを対象に、常温半導体検出器 信号のディジタル波形解析を用いたエネルギー分解能の改善、
  2. 短パルス電子ビームの波形モニターの開発や固体飛跡検出器を用 いたマイクロイオンビームイメージングの可能性検討
  3. 光核反応の断面積評価と分析応用の検討
などを行った。

高速中性子ラジオグラフィの研究
  吉井 康司
  1. イメージングプレートを用いた高速中性子ラジオグラフィ
     イメージングプレート(I.P.)は、以前から医療診断分野 でよく使用されており、また、新村らにより熱中性子ラジオグラ フィ用のI.P.が開発され、利用されている。I.P.による 撮影の長所は、その解像度が200μm以下であり、測定量のダ イナミックレンジが広いため低照射量でも十分な測定ができ、短 時間に撮影結果が得られ、画像データを画像処理することもできる。 そこで、FNR用のI.P.を開発する目的で、X線用I.P.を 高速中性子ラジオグラフィ場に使用し、その特性を測定した。

  2. 冷却型CCDカメラシステムを用いた高速中性子ラジオグラフィ
     冷却型CCDカメラシステムは、放射線に対して予想通り損傷 が大きく、この対策として、撮影場TCOの45cm 角ビーム孔に、 重コンクリート製の20cm 径コリメータを製作し、設置し直 接に放射線がCCDカメラに照射されないようにした。しかし、 冷却型CCDシステムはそのCCD素子の放射線感受性が強いた めにホワイトスポットノイズと呼ばれるノイズが発生し、画像劣 化を生た。このノイズ除去として日本原子力研究所の松林氏及び 神戸大学の本林氏が各々独自に開発した除去プログラムを適用し た結果、定量的評価に耐える画像が得られた。
  3. 円筒形の被写体を用いての散乱線評価
     昨年度は薄肉円盤モデルを用いての、被写体よりの散乱線評価 を行った。本年度は、円筒形の被写体に拡張して評価した。被写 体として鉄製の円筒試料を考え、円筒試料中心に対応する画像取 得蛍光コンバータ上の点での試料全体からの全散乱中性子線強度 を、以下の仮定を用いて計算した。平行ビームで入射したエネル ギー1MeVの高速中性子が、試料中のある深さで等方散乱をす る。多重散乱は検討せず、1回散乱のみを考える。入射高速中性 子および散乱中性子の鉄試料内での減衰を考慮する。減衰係数は 、1MeVの中性子に対応する鉄の全断面積(Σt)より推定し た。推定した散乱線モデルについて、実験結果と比較を行うため に、数種類の鉄製の円筒試料を用意し、高速中性子テレビジョン 法にて撮影した。蛍光コンバータと試料を密着した場合の撮影画 像中心での散乱線成分について、解析値と実験値との比較を行っ た。厚さが3cmの試料で、試料の半径をパラメータとして、解 析値と比較した結果、両者はほぼ一致し、半径6cm以上の試料 で散乱線成分は飽和傾向を示た。また、半径が3cmの試料で、 試料の厚さをパラメータとして、解析値と比較した結果、両者は ほぼ一致し、厚さ2.5cmにピークを持ち、厚さが増すほど散 乱線成分が小さくなる結果を示した。

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