UTNL-W-0003J Section 2.6
2. 研究活動
2.6 ブランケット管理部
(1)構成
       	助教授 吉田義勝
       	助 手 吉井康司
(2)主な研究活動        
(1) 高温超電導体の特性評価と応用       吉田義勝
高温超電導体の工学的応用は材料開発の進展に伴って魅力的なものになってきている。特 に、Y系バルク材やBi系テープ材による電磁力応用や強磁場発生マグネット応用は期待さ れる技術であるが、その実現のためには応用システムの特性評価と高温超電導体自体の特 性評価が重要な課題である。平成8年度には高温超電導体の核融合炉応用(マグネット、 磁場制御)と電磁力応用(エネルギー貯蔵用フライホイール)に着目し以下のような研究 を行なった。
(1-a) Bi2223高温超電導テープ材を用いて四端子法による臨界電流密度測定実験を行なった。 この際テープ材に印加する外部磁場の角度を変化させ、臨界電流密度の異方性の一つであ る磁場印加角度に対する依存性を調べた。また、有効コヒーレンス長テンソルを導入した 理論モデルを構築し、c軸方向の磁場成分のみが臨界電流密度に寄与するとの結果を得た。 測定結果はこの理論に基づく結果と一致し、モデルの妥当性が示された。
(1-b) 平成7年度に提案したY123高温超電導バルク材の実効的フロー抵抗率測定手法の検 証を行なった。この測定手法(パルス励振法)は、片持ち梁に取りつけた超電導バルク材 にパルス磁場を印加し、その際の振動波形からフロー抵抗率を測定するものである。本年 度にはBiテープ材(四端子法により正確なフロー抵抗率の測定が可能)にパルス励振法を 適用し、フロー抵抗率の推定を行なった結果、推定値は四端子法による測定値と精度良く 一致し、フロー抵抗率測定としての有効性が確認された。
(1-c) Y123高温超電導バルク材を応用した磁気浮上システムの動的特性を磁束クリープの 影響に着目して解析した。実験結果ではロータの回転数が0の場合でも浮上力の経時的減 衰が観察される他、超電導体の受ける磁気的履歴によっては逆に浮上力が増加するという 現象も観察された。解析では磁束フロー・クリープモデルに基づく遮蔽電流・浮上力解析 コードを適用し、これらの電磁力変化を定量的に評価することが出来た。さらに、磁気的 履歴を利用して電磁力減衰を抑制することが可能であることも示した。
(2) 電磁的非破壊検査に関する研究 吉田義勝
核融合炉第一壁、PWR蒸気発生器細管、原子炉圧力容器等の導電性・磁性材料の電磁的 非破壊検査手法に関する研究を行なっている。平成8年度には、渦電流と材料中欠陥との 相互作用問題(順問題)の解法として磁気ベクトルポテンシャル積分方程式法を開発し、 実験との比較によりその妥当性を示した。また、探傷プローブの最適設計に関する研究も 実施した。
(3)高速中性子ラジオグラフィの研究       吉井康司
(3-a) 高速中性子ラジオグラフィでの環境中の散乱線評価
 冷却型CCDカメラシステムを用い、被写体を撮影したところ、環境中よりの散乱線によ り画像に影響を与えていることがわかり、その寄与を実験的に求めたところ、20cm直径 コリメータでは、全発光強度の約8%であると推定できた。
(3-b)高速中性子ラジオグラフィ用コリメータ比測定治具の開発
 厚さ10mmの鉄板に100mmの距離を離して10mm直径の穴をあけたものと、その中央に 20mm直径の穴をあけた治具を製作した。その治具を日本製作所にあるベビーサイクロト ロン場にて撮影を行いコリメータ比を推定したところ、ほぼ撮影場のコリメータ比と一致 した。
(3-c)高速中性子ラジオグラフィ用イメージングプレートの開発
 高速中性子用イメージングプレートの感光モデルとして反跳陽子による反応とLi-7 の (n,α)反応を利用する方法を検討した。実際の製作は富士フィルム(株)のご厚意によ った。その結果、反跳陽子モデルでは若干の感度上昇があったが、Li-7については十分な 感度上昇が得られなかった。なお、本研究は平成8年度科学研究費基盤研究Cによった。
(3-d)高速中性子ラジオグラフィ用蛍光コンバータの開発
 反跳陽子の反応を用いた蛍光コンバータについては、ある程度の成果が得られている。 そこで、Li-7の(n,α)反応を用い、約2MeV以上の中性子に感度を持つ蛍光コンバータの 開発をアスク(株)の協力により行った。しかし、Li-7を混合したコンバータを製作する ことが十分にできなく、十分な結果を得ていない。