UTNL-W-0004J Section 2.5
2. 研究活動
2.5 ライナック運転管理部

 

[1]構成

教 授 宮 健三

助教授 上坂 充

助 手 吉井康司

技術官 上田 徹、原野英樹

 

 

[2]主な研究活動

 

(1)レーザーフォトカソード型高周波電子銃を用いたXバンドフェムト秒ライナックについての数値的検討

 電子軌道計算コードPARMELAを用いてレーザーフォトカソード型高周波電子銃を用いたXバンドフェムト秒ライナックの実現性に対する数値計算を行った。PARMELAにより計算により計算したレーザーフォトカソード型Sバンド高周波電子銃より得られる電子パルスのパルス幅は〜10psとXバンド高周波の一周期87.5psより短いことが判った。従ってSHBなしでシングルパルス生成が可能であり、システムは単純なものとなる。また、本電子銃は低エミッタンスの良質ビームを発生することが知られており、後段の磁気パルス圧縮にとっても有利である。また、レーザーフォトカソード型Xバンド高周波電子銃を用いることで、クライストロンが一個で済む等、更なるシステムのコンパクト化が図れる。

 

(2)フェムト秒Xバンドライナック用マスターオシレーターシステムの検討

 将来計画としてXバンドライナックによるフェムト秒シングルビームの発生に向けて、加速器の設計、ビーム計測等の準備が進めらている。この研究においては、Xバンドシングルビームライナックにおけるマスターオシレーターシステムを試作し、試験した。その結果、2856MHz逓倍器に位相ジッターを発生させる原因があることが判明した。今後、2856MHz逓倍器の回路方式を検討し、性能を上げる必要があることが判った。

 

(3)Sバンドライナックによるフェムト秒電子パルスの発生

 Sバンドライナックにレーザーフォトカソード型Sバンド高周波電子銃およびシケイン型磁気パルス圧縮器を導入してフェムト秒電子パルスの発生を検討した。計算は線型加速器内電子軌道コードPARMELAを使用した。電子銃からの発生電荷量を1nCと想定した場合、シケイン通過後のパルス幅は200fsに圧縮されてることが示された。実験の結果、約450fsの電子パルスが確認された。

 

(4)サブピコ秒時間分解X線回折法の基礎研究

 サブピコ秒電子ライナックからの様々な放射光を励起(ポンプ)パルスに、X線を分析(プローブ)パルスに使用し、物質中のサブピコ秒ミクロ現象の時間分解分析を可能にするサブピコ秒時間分解X線回折法を検討した。このシステムの場合、ポンプ光とプローブ光間の時間的遅延はポンプ光の光路長を変化させることで調節するので、積算時によく問題となる時間遅延の変動が原理的に全く存在しないという画期的な特長がある。X線パルス波形並びにその強度推定のため、35MeV単色電子パルス入射により銅箔中で発生しNaCl単結晶に到達するX線パルス波形を光子電子輸送モンテカルロコードEGS4を用いて計算した。なお、K殻に空孔が生じてからKα線を放出するまでの時間は銅の場合、1fs程度であるため本計算では無視している。

 

(5)高品質電子ビーム源の開発

 一般にレーザー加速をおこなわせるためには、先行するレーザービームと後続する電子ビームを、空間的にも時間的にも超高精度に同期させる必要がある。レーザー航跡場の波長はほぼ60μm程度であり、空間的広がりもレーザースポットサイズ以下である。したがってレーザー航跡場の加速位相に入射して加速するには電子ビームのバンチ長は100fs以下、スポットサイズは10μm以下にしなければならない。このためには低エミッタンス電子ビーム源とバンチ圧縮が行なえる入射ビームラインが必要である。この電子ビーム源としてKEK/BNL/SHIによって共同開発したフォトカソードRF電子銃を導入し、18Lライナックでビームテストを行い、この電子ビームを用いてシレインマグネットによるバンチ圧縮実験を行った。フォトカソードRF電子銃は、2856MHzの共振周波数をもつ1.6セルの加速空洞とエミッタンス補償用のソレノイド電磁石からなる。全固体YLFレーザーの4次高調波(263nm)を銅カソード面に照射することにより光電子をRF空洞内に放出すると同時にRF高電場で加速する。加速電場はRFパワー6MWに対し、約100MV/mとなる。測定の結果、量子効率は約0.01%であり、規格化エミッタンスをソレノイド磁場を変えて測定した結果、最小エミッタンスは2πmm-mmradとなった。