2. 原子炉機器工学研究部門

(1) 構成

教授       宮  健三
助教授      吉田 義勝
非常勤講師    ミラノビッチ プレドラッグ
助手       出町 和之
大学院生
 博士課程 3年 ギラーニ アティラ、 内一 哲哉、 
         陳 振茂、 羅 雲
      2年 ポパ ラドゥ クリスチャン、マイケル ラバラ 
      1年 福崎 康博、程 衛英、ミハラケ オビドュ
 修士課程 2年 高瀬 健太郎、 中山 匡
      1年 山田 智海、 新藤 理
 学部学生 4年 杉山 隆浩、 遊佐 訓孝
(2) 主な研究活動

磁気特性変化に基づいた構造用鋼の損傷の非破壊診断
Gilanyi Attila、 宮 健三
一般に、硬さ・延性--脆性遷移温度(DBTT)・その他すべての非弾性特性といった 材料の広い範囲の機械的特性は構造敏感性を有する。一方、電磁気的特性もまた 材料の微細構造に対する敏感性を有するため電磁気的特性の変化を通して機械的 特性変化を間接的に求められる可能性がある。これはすなわち電磁気的非破壊診 断に等しい。本研究では、磁気的特性と材料の微細構造変化との相関は磁区と格 子欠陥との相互作用によって生じるという事実に基づき強磁性材料に適用可能な 磁気的非破壊診断手法を提案してその妥当性の検証を行なった。特に強磁性材料 における磁気的特性の、疲労損傷・焼きなまし・塑性変形に対する感度に着目し、 実験には軽水炉圧力容器の典型的材料である A533B低合金鋼を用いた。これより A533B原子炉圧力容器鋼の磁気的特性は焼きなましや降伏応力もしくは塑性変形 以下での疲労による微細構造の変化に対して非常に感度が高く、本手法が有望な 手法であること。本手法による非破壊診断は微弱磁場の条件下でも感度が高く、 磁気非破壊診断を実用体系に適用する場合の有力な候補となる。という結論が得 られた。

Studies on Probe Optimization and Reconstruction of Crack Shape for the Enhancement of ECT Technique
陳 振茂、 宮 健三
The probe optimization and ECT inversion was conducted in this work by develping a distinctive featured method for probe evaluation and a fast ECT inversion scheme for reconstruction of crack shapes. The plus-point probes currently used. The numerical analysed also shown that, the inclination of crack does not affect the ECT signals significantly. The distinctive featured approach using exciting magnetic fields was proposed and validated for the optimal design of ECT probes and two new probe structures were proposed based on this theory. The proposed fast ECT inversion scheme using data base was successfully used in the reconstruction of single DEM artificial crack embedded in a conducting tube or a conductor with more complex geometry.

Optimized Crack Detection and Inversion in Eddy Current Testing
Popa Radu Christian、宮 健三
A new computer assisted design method was proposed, which leads to an optimized ECT sensor. The qualitative and quantitative design criteria are obtained from the analysis of flaw field and noise field patterns. Two new probes are proposed and their parameters validate the method. Furtheremore a new and fast algorithm for inverting eddy current data in order to reconstruct crack shapes was developed, based on a multivariate data analysis and neural network technique. The method produces a robust statistical inverse mapping between the space of processed signals and of crack parameters.

Reconstruction of Multiple EDM Slots from ECT Signals by Using a Database Approach
程 衛英、陳 振茂、宮 健三
The recent studies are mainly concerned with flaw reconstruction. In the first step, a single 3-dimensional crack is reconstructed. The second step is the reconstruction of multiple cracks. The signal of multiple cracks is investigated .The location and shape of EDM slots in a conducting plate are reconstructed from ECT signals by using a model-based inversion strategy.The strategy includes a data based fast forward solver and a first order optimization algorithm. By using a database, the forward problem can be solved very fast. The reconstruction is greatly speeded up comparing with the conventional approaches. It has been shown by the present numerical simulation that the proposed method is feasible for identifying multiple cracks in a conducting plate by some subsidiary information, such as the number, the region, the orientation and the type of cracks.The results of this study will contribute to the identification of natural cracks.

高温超電導プラズマ安定化コイルの小型トカマク実験装置への適用
遊佐 訓孝、山田 智海、内一 哲也、吉田 義勝、宮 健三
本研究において、我々はJFT-2Mにおける制御系を例に取りあげ高温超電導体、及び PFコイルによるプラズマ制御の比較を行なった。その結果高温超電導体によるプラ ズマ安定化は、PFコイルによる能動制御に比べて遜色なく、さらに能動制御が効か なくなるような変化の速い擾乱に対しても有効であるという優れた特徴を持つとい うことを示した。よって、高温超電導体プラズマ安定化手法を実際のトカマク型プ ラズマ閉じ込め装置に適用することは十分に可能であり、またその場合従来のコイ ル電流制御による能動的なプラズマ安定化手法は必要なくなるということが示され た。さらに、将来実験によって本手法の有効性を示すことを考え、大半径0.3m、小 半径0.1mの小型のプラズマ閉じ込め装置の設計を行ない、その体系を用いた数値計 算によって高温超電導体のプラズマ安定化効果を検証する実験が可能であることを 示した。

高温超電導体とトカマクプラズマとの電磁相互作用
内一 哲哉、山田 智海、福崎 康博、ミハラケ オビドュ、宮 健三
高温超電導体およびプラズマの電磁的相互作用を明らかにし、それに基づき 磁気閉込め方式核融合炉に対する高温超電導体の幾つかの応用を検討した。 いずれの応用も、これまでに検討されたことのない新しい超電導体の応用で あり、従来の低温超電導体では実現不可能なものである。本研究の結論は、 (1) 高温超電導体が存在する場合のプラズマの電磁的応答をモデル解析によ り求めた結果、高温超電導体によりプラズマの位置不安定性を改善できるこ とが理論的に示された。(2) 上記手法を大型炉体系に適用した場合の有効性 及び炉工学的適用性について検討した結果、高温超電導体によりプラズマは 充分安定化することが検証され、且つ現在開発されている高温超電導線材を 大型トカマクプラズマの安定化に適用することは可能であるとの結論を得た。 (3) 高温超電導体によるプラズマ安定化手法を適用した高非円形小型トカマ ク炉の設計を行った。その結果、高温超電導体の適用以外に先進技術を仮定 せずとも、炉心性能の向上が期待でき、自己点火可能な小型炉が可能である ことが示された。(4) 高温超電導体によるトカマク炉の炉内磁場整形手法を 提案し、その有効性を大型炉体系にて数値解析により検証した。の四点にま とめられる。

高温超電導体を用いたプラズマ垂直位置不安定性改善手法の検証実験
福崎 康博、内一 哲哉、宮 健三
高温超電導体を用いたプラズマ垂直位置不安定性改善手法の検証実 験のために用いる、小型プラズマ試験装置の製作準備活動を開始し た。TFコイルの設計パラメーターの決定や、電磁場、電磁力等の 計算を行なうツール群を作製し、コイルの熱設計等を実施した。ま た、この試験装置の予備実験として、高温超電導体を実際に用いた モデル鞍型コイル(直径10cm、高さ10cm)を設計し、作製した 。同時に超電導線の接続部の抵抗評価実験も行ない、その結果、接 続抵抗値は超電導体の磁束フロー状態における抵抗値に比べて十分 無視できる程小さいことが判明した。モデルコイルの特性評価試験 は、平成10年度前半に終了する予定である。

磁束量子動力学法による高温超電導体の磁化の評価
杉山 隆浩、出町 和之、高瀬 健太郎、ミラノビッチ プレドラッグ、宮 健三
本研究では従来の高温超電導磁束量子動力学法を改良し、シミュレーション及びその解析結果から高温超電導体の磁化の評価を行なった。解析対象としてはBi2Sr2CaCu2O8+x (Bi2212)単結晶を用い、ピンニングセンタは重イオン照射による円柱状欠陥とした。解析結果及び結論としては次のようなものが得られている。まず、外部磁場を時間的に変化させたときのパンケーキ磁束挙動からBi2212単結晶の磁化特性(M-Hカーブ)を求め、臨界状態モデル(Beanモデル)との比較を行ない、本手法の妥当性を確認した。次に照射量を変化させた場合における臨界電流密度Jcの数値計算結果と実験値の比較を行ない、これより実験と数値解析結果の定量的一致が確認された。

高温超電導磁気軸受の緩和特性とその改善
羅 雲、新藤 理、吉田 義勝、宮 健三
高温超電導体と永久磁石の間で得られる電磁力の材料、幾何学パラメータ の感度解析を行った。これらのパラメータと浮上特性との関係を考察し た上、最適設計手法を提案した。また、超電導パラメータの遮蔽電流 分布及び電磁力を解析的に評価する手法を開発し、浮上特性の設計に 有用なツールを提供した。磁束クリープによる磁気軸受浮上特性緩和の 数値計算による評価を実施し、数値計算結果が緩和特性の特徴を 正確に反映しており、磁気軸受の設計に十分摘要できることを確かめた。 また、超電導遮蔽電流のヒステリシス特性を利用することにより、緩和特性が 改善されることが数値計算と実験により分かった。この改善手法は高温超 電導体の固有の性質を利用したものであり、実用性が高い。  また、不均一な磁化分布を持つ永久磁石が高速回転する時に超電導体内で生じる 回転損失の実験的評価を実施した。

Anisotropic dependence of critical current density on magnetic field for Ag-sheathed Bi2Sr2Ca2Cu3Ox superconductive tape
Rabara Michal、 吉田 義勝、中山 匡、出町 和之、 宮 健三
An axial probe for evaluation of Jc=Jc(B, T, θ) was designed and fabricated. The probe is capable of carrying currents over 250 A in magnetic field up to 13 T. The critical current density of 61 filament Bi2223 tape was measured by this probe in temperature range from 10 K to 100 K for two orientations of the magnetic field. Obtained results confirm high sensitivity of the superconductor to the field, especially for B||c orientation. Moreover, the Jc=Jc(B) dependence reveals logarithmic relationship and it is in good agreement with scaling law proposed by Kobayashi. Derived irreversible lines show temperature dependence as Birr([1-T/Tc]n, with distinct kink observed at higher temperatures. The transition from n=1.65 to n=3 is explained in a sense of crossover from weakly to high correlated regime of fluxoids.

高温超電導線材における交流損失によるクエンチ可能性の評価
中山 匡、吉田 義勝、宮 健三
高温超電導体を核融合炉に適用するには克服しなければならない種々 の問題があり、変動磁場下で生じる交流損失とそれに対する安定性は その一つである。本研究では磁束クリープ及び磁束フローが交流損失に 及ぼす影響を定量的に評価するために、(1)臨界状態モデル[1][2]、 (2)磁束フローを考慮した臨界状態モデル(以下、広義臨界状態モデル)、 (3)磁束フローと磁束クリープを考慮したモデル(以下、磁束フロー・ クリープモデル)といる3つのモデルに基づいて交流損失を計算し、比較検討 した。その結果、磁場振幅が大きく周波数が大きいときには、磁束フローの 影響は考慮すべきであるが、磁束クリープは無視できることが分かった。 熱・電磁連成解析コードを開発し、変動磁場下における高温超電導線材の 安定性を評価した。 この結果、50/Tsのような速い磁場変動の下でも高温超電導テープは 安定であることが分かった。