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「熱流動の知的能動制御に関する研究」の経過報告

1. 序

本研究グル−プでは、 核融合炉の第一壁あるいはブランケットを始めとする各構成要素における 熱流体力学的問題に注目して、 特に従来にない極めて高い熱流束を いかにして安全かつ効率的に扱うかという観点から、 対流冷却にかかわるいくつかの基礎的問題を取り上げて研究を続けている。 これらの研究は、 機械工学専攻において行われている。

2. 研究の進捗状況(装置の改良等を含む)

　平成9年度は、ブランケット内の様々な熱流動を制御して、所要の熱輸送、 流動抵抗削減を達成する技術の確立を目指して、基礎的な検討を行った。 特に、近年顕著な発展が見られるマイクロマシン技術(MEMS)の応用を想定した、 知的能動制御法の可能性について、 理論、シミュレーション、実験的研究を行った。
　まず、形状が複雑な流路や、 時空間的な流路変形(ぜん動壁や壁面変形制御アクチュエータ)を含む 流れ場の数値シミュレーションのための数値スキームの検討を行い、 信頼性の高いプログラムコードの開発を行った。 また、 壁面変形が流れ場に及ぼす影響、 特に壁面摩擦・熱伝達に対する効果を検討した。
　一方、固気2相乱流の直接数値シミュレーションを行い、粒子の運動、 空間分布形態、粒子運動が流れ場に及ぼす影響、 そして機能性粒子による熱伝達制御の可能性を検討した。 特に、温度によってスイッチ効果を有する機能性粒子によって、 著しい伝熱促進が計られる可能性が明らかになった。
　さらに、マイクロアクチュエータの試作、 これらを配備したインテリジェントノズルの試作と性能試験を行い、 インテリジェントノズルによる運動量・ スカラー量の拡散制御が可能であることを明らかにした。

3. 今後の予定

　来年度は、 壁面を必要に応じて変形させることによってダクト内乱流と その熱伝達の制御を可能とする知的能動制御のシミュレーションを行う。 固液2相乱流の直接数値シミュレーションにおいては、 粒子と流体の干渉を考慮する two-way coupling の適用を試みる。 さらに、ハードウエアとしてのマイクロアクチュエータ、センサ、 そして制御システムの構築を試みる。

4. 発表論文リスト

(A) 学位論文等

1. 三戸 陽一, 「フレキシブル・チャネル乱流の直接数値シミュレーション」, 東京大学博士論文, 1997年6月.
2. 佐藤 一穂, 「画像処理技術を応用した速度・スカラー同時計測システムの開発研究」, 東京大学博士論文, 1997年6月.
3. 小木 貴宏, 「アクティブ制御された壁乱流の摩擦抵抗低減及び準秩序構造の変化に関する研究」, 東京大学修士論文, 1998年3月.
4. 水矢 亨, 「壁面剪断乱流における分散固体粒子と乱れの相互作用に関する研究」, 東京大学修士論文, 1998年3月.
5. 荒井 穣, 「温度分布を有する壁乱流中の固体粒子による熱輸送の数値シミュレーション」, 東京大学卒業論文, 1998年3月.
6. 加地 邦彦, 「自由表面を伴う乱流輸送現象の直接数値シミュレーション」, 東京大学卒業論文, 1998年3月.
7. 島 宏樹, 「フラップ型電磁アクチュエータによる噴流のアクティブ制御に関する研究」, 東京大学卒業論文, 1998年3月.
8. 横尾 雅之, 「バーガース乱流の準最適制御に関する研究」, 東京大学卒業論文, 1998年3月.

1. Sato, K., and Kasagi, N., "Development of a Scanning Laser-Induced Fluorescence Technique for the Measurement of an Unsteady Scalar Field", Proc. 4th World Conf. Exp. Heat Transfer, Fluid Mech. & Thermodyn., Brussels, June 1997, Vol.1, pp.233-240.
2. Kasagi, N., "Progress in Direct Numerical Simulation of Turbulent Transport and Its Control", Proc. 2nd Int. Symp. Turbulence, Heat and Mass Transfer, Keynote Lecture, K. Hanjalic and T. W. J. Peeters, Eds., Delft University Press, 1997, pp.19-34.
3. Mito, Y., and Kasagi, N., "Turbulence Modification with Streamwise-Uniform Sinusoidal Wall-Oscillation", Proc. 11th Symp. Turbulent Shear Flows, Grenoble, Sep. 1997, Vol.1, pp.9.7-9.12.
4. Suzuki, Y., and Kasagi, N., "Active Flow Control with Neural Network and Its Application to Vortex Shedding", Proc. 11th Symp. Turbulent Shear Flows, Grenoble, Sep. 1997, Vol.1, pp.9.18-9.23.
5. Satake, S., and Kasagi, N., "Suboptimal Turbulence Control with the Body Force of Selective Velocity Damping Localized to the Near-Wall Region", Proc. 11th Symp. Turbulent Shear Flows, Grenoble, Sep. 1997, Vol.1, pp.P1.43-P1.48.
6. Iida, O, Kasagi, N., and Nagano, Y., "The Effect of Stable Density Stratification on the Dynamics of Turbulent Channel Flow", Proc. 11th Symp. Turbulent Shear Flows, Grenoble, Sep. 1997, Vol.2, pp.20.1-20.6.
7. Suzuki, Y., and Kasagi, N., "Active Control of Wall Turbulence with an Array of Flush Mounted Flaps", Bull. Ame. Phys. Soc., Vol.42, No.11, p.2247, 1997.
8. Sato, K., Kasagi, N., and Suzuki, Y., "Combined Velocity and Scalar Field Measurement with the Simultaneous Use of PIV and Scanning LIF", Proc. 10th Int. Symp. Transport Phenomena in Thermal Science and Process Engineering, Kyoto, Dec. 1997, Vol.2, pp.541-546.
9. Iida, O., and Kasagi, N., "Turbulent Structure in Horizontal Channel Flow Under Unstable Density Stratification", IUTAM Symposium on Variable Density Low-Speed Turbulent Flows, L. Fulachier, J. L. Lumley and F. Anselmet, Eds., 1997, Kluwer, Dordrecht, pp.189-196.

1. 佐竹, 笠木, 「壁面剪断乱流の準最適制御に関する基礎的研究」, 日本機械学会論文集, Vol.63B, No.605, 1997, pp.24-31.
2. 矢野, 笠木, 「高プラントル数流体における乱流熱輸送の直接数値シミュレーション」, 日本機械学会論文集, Vol.63B, No.612, 1997, pp.2840-2847.
3. 三戸, 笠木, 「チャネル乱流に対する壁面の正弦振動変形の影響」, 第34回日本伝熱シンポジウム講演論文集, 1997, Vol.1, pp. 59-60.
4. 佐藤, 笠木, 「温度差を有する水平混合層における速度・温度同時計測」, 第34回日本伝熱シンポジウム講演論文集, 1997, Vol.2, pp.353-354.
5. 小木, 笠木, 佐竹, 「フレッシェ微分を用いたバーガース方程式の準最適制御」, 日本機械学会第10回計算力学講演会講演論文集, No.97-7, 1997, pp.261-262.
6. 鈴木, 佐竹, 笠木, 「ニューラルネットワークを用いたバーガース方程式の最適制御」, 日本機械学会第10回計算力学講演会講演論文集, No.97-7, 1997, pp.263-264.
7. 笠木, 佐竹, 「乱流制御とDNS」, 日本流体力学会誌【ながれ】, Vol.16, 1997, pp.188-196.
8. 三戸, 笠木, 「振動変形する2次元チャネル内の乱流準秩序構造」, 日本流体力学会年会'97, 日本流体力学会誌, Vol.16別冊, 1997, pp.175-176.
9. 中島, 鈴木, 笠木, 池谷, 「3-D PTV による鉛直チャネル乱流中における固体粒子運動の計測」, 日本流体力学会年会'97, 日本流体力学会誌, Vol.16別冊, 1997, pp.199-200.
10. 水矢, 笠木, 「DNSによるチャネル乱流中の固体粒子運動の数値解析」, 日本流体力学会年会'97, 日本流体力学会誌, Vol.16別冊, 1997, pp.201-202.
11. 鈴木, 笠木, 佐田, 「壁面アクチュエータ群による乱流のアクティブ制御に関する研究」, 日本流体力学会年会'96, 日本流体力学会年会'97, 日本流体力学会誌, Vol.16別冊, 1997, pp.277-278.
12. 小木, 笠木, 佐竹, 「スパン方向速度の抑制による乱流の準最適制御」, 第11回数値流体力学シンポジウム講演論文集, 1997, pp.147-148.
13. 水矢, 笠木, 「チャネル乱流中の固体粒子運動に対する乱れの非ガウシアン効果」, 第11回数値流体力学シンポジウム講演論文集, 1997, pp.243-244.
14. 笠木, 「浮力の作用する乱流の直接数値シミュレーション」, 第3回複雑乱流場の熱輸送シンポジウム, 日本建築学会, 1988, pp.9-12.