UTNL-W-0007J
Section 2.5

2. 研究活動

2.5 ライナック運転管理部

1、 構成

管理部長 宮 健三 教授
(副)管理部長 上坂 充 助教授
管理部員 吉井康司助手、原野英樹助手、上田徹技術官

2、 主な研究活動

(1) フォトカソードマイクロ波電子銃の50Hz運転実績の構築

導入されたフォトカソードRF-GUNシステムの運転、保守、利用の立場から、高繰り返し(50Hz)運転に伴う特性(温度特性、暗電流等)とその問題点を明らかにした。その結果、高繰り返しで使用する場合に冷却水温度を変えてチューニングすることにより何ら問題無く使用できること、また、暗電流の透過率等を調べその原因と思われることを実験から推定することができた。現時点では暗電流を全くなくすことは不可能ではあるが、ある程度低く抑えられている。なお、今後、実験の目的により、暗電流が問題となる時にはもっと細かい対策が必要となる。

(2) ツインライナックの運転モード切り替えシステムの構築

ライナックの利用は多く、いろいろな実験に適用するためにビームモードの切換えの労力と時間を多大に必要とした。今回、運転モードの切換えを簡単に行なえるように、ライナックの導波管の切換えシステムを構築した。また、今回の改造は、大電力マイクロ波用の導波管切換え器を3台、大電力移相器を1台、および大電力減衰器1台を新たに増設した。この結果、大電力移相器は、28MeVモード運転時に加速管1と2の間に挿入し最適位相を調整できる。また、大電力減衰器は、フォトカソードRF電子銃と加速管3との組合せで使用され、実験の目的によりエネルギーを可変することができる。今回の改造によりビームモードの切換え時間が大幅に減少した。今までは3人で1日もかかっていた作業が、1人でわずか5分もかからなくなった。よって、保守管理においても信頼性の向上になる。

(3) フォトカソード高周波電子銃の性能試験

フォトカソード高周波電子銃は熱電子銃に比べて、低エミッタンス、短パルスをえられることから、X線FEL、高品質ビーム源などの応用に期待されている。我々が用いている高周波空洞は、BNLで開発されたものを50Hzの高繰り返しに耐えるように改良したものである。平成10年度に、フォトカソード照射用レーザーシステムを更新することで、エミッタンスが10πmm-mrad以下、パルス長が5ps、エネルギーが約3MeV、電荷量が1nC以上、電荷量の安定度1%(rms)の電子ビームを発生することができるようになった。銅カソードの量子効率の低下が認められたが、10E-10Torrの真空度にすることで、1.4E-4の量子効率まで回復した。

(4) ピコ秒時間分解X線回折システムの構築

極短ポンプパルス入射により生じる格子状態の過渡的変化の直接観測を、サブピコ秒X線プローブパルスを用いたX線回折により動的に行うサブピコ秒時間分解回折法を提案し、本ライナックにおける実現可能性について確認した。また、X線回折基礎実験を行い、Si、GaAs、NaCl、KCl、Ge、BaF2、CaFの代表的な単結晶に対し、CuKX線による回折像を取得した。現在、これらの結果を定量的に考察することによりX線変換発生部や放射線遮蔽体等について最適化を進める一方、電子ライナックとフェムト秒T3レーザーとをピコ秒レベルで同期させたピコ秒時間分解回折システムを構築している。レーザー入射による熱膨張過程をX線回折によるピコ秒オーダーにて観察し、一次元熱伝導方程式による数値解解析結果と比較、考察することで、システムの実現性に関する検討を行った。

(5) Xバンドライナック設計検討

XバンドRF電子銃とXバンド加速管1本で加速と変調を行うシステムについて検討を進めた。主な検討は、ライナックのビームシュミレーションコードGPT(General Particle Tracer)を用いて計算を行った。PARMELと機能は類似しており、電子ビームを数十から数千のマイクロパーティクルに置き換え、電磁場との作用を時間領域で計算する。空洞や磁石等の様々な電磁場との作用は当然計算でき、マイクロパーティクル同士の空間電荷効果も計算可能である。さらに加速管部では、ここでの検討のためにエレメントを追加し、ショートレンジウェークも近似的にシュミレーションした。