UTNL-W-0009J

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Annual Report of Nuclear Engineering Research Laboratory (1999)
原子力工学研究施設年報(平成11年度)
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Nuclear Engineering Research Laboratory
University of Tokyo
Online Reports on Nuclear Engineering
Ed. M. Uesaka and T. Mukohara
Nuclear Engineering Research Laboratory
University of Tokyo


目次
0. 巻頭言
1. 大型設備の経過報告
1.1 原子炉「弥生」経過報告
1.2 ライナック経過報告
1.3 ブランケット経過報告
1.4 重照射運転管理部経過報告
2. 研究活動
2.1 原子炉本部
2.2 原子炉機器工学研究部門
2.3 ビーム物質相関部門
2.4 原子炉設計工学研究部門
2.5 ライナック運転管理部
2.6 ブランケット管理部
2.7 重照射運転管理部
3. 研究発表
3.1 原子炉本部
3.2 原子炉機器工学研究部門
3.3 ビーム物質相関部門
3.4 原子炉設計工学研究部門
3.5 ライナック運転管理部
3.6 ブランケット管理部
3.7 重照射運転管理部
4. 教育
4.1 原子炉本部
4.2 原子炉機器工学研究部門
4.3 ビーム物質相関部門
4.4 原子炉設計工学研究部門 
5. 研究施設一年間の行事
6. 研究施設見学者一覧
7. 海外出張記録等
7.1 教職員海外出張記録
7.2 大学院生海外出張記録 
7.3 海外研究員・短期留学生記録
8. 学会賞等
9. UTNLレポート一覧

巻頭言

主任教授 岡 芳明

本年報は東京大学大学院工学系研究科附属原子力工学研究施設の平成11年度の研究教育活動、研究設備の運転状況などについてとりまとめたものである。本施設には高速中性子源炉「弥生」、電子ライナック、核融合ブランケット設計基礎実験装置、重照射研究設備(HIT)がある。前2者は全国大学共同利用、ブランケットは工学系研究科内のHITは原子力研究総合センターを通じて学内の共同利用に供している。なおこれらの設備はいずれも活発に利用されており、個々の研究テーマの成果はそれぞれの成果報告書にまとめられている。

本年度は平成10年度補正予算にて導入したフェムト秒高速量子現象研究設備に周辺機器の整備を行うことができた。本研究設備はフェムト秒電子ライナックレーザー同期システム、12TW50フェムト秒レーザーシステムと分析装置群より構成されている。本施設の電子ライナックは世界最短の電子パルスを発生できその世界記録を何度もぬりかえてきたが、本装置によりそのかがやかしい歴史に新たなぺージを加えることが可能になった。この装置を用いてフェムト秒時間領域の放射線化学反応が分析できる。12TWレーザはその照射によりレーザプラズマを作り、電子、X線、イオン、中性子等の極短ビームを生成できる。これによりまず原子ダイナミックスの動画像化の研究を進めている。従来の静止情報に比べてさらに進んだ情報が得られると期待している。

本施設では平成7年度に独自に外部評価を実施し、高い評価を得ているが、平成11年度は工学系研究科が外部評価を実施するのに伴い、2度目の外部評価を受けることになった。外部評価委員長は村上健一日本原子力研究所副理事長で委員には木村嘉孝高エネルギー加速器研究機構物質構造科学研究所長、藤原正巳文部省核融合科学研究所長、峰松昭義東京電力(株)原子力技術部長と各方面の代表する方々をお迎えした。評価は組織・運営・人事、教育、研究部門の成果、その他の項目についてまとめられた。幸い、これまでの成果と今後の方向性について高い評価を受け期待が表明された。いただいた貴重なご意見、示唆は今後の展開において活用したいと考えている。本施設では弥生研究会と名付けた多くの研究会を共同利用の一環として開催しているが、それらとは別に原子力全体を視野に入れその発展を図るために「核エネルギーシンポジウム」を毎年開催している。平成11年度は9月13日に開催し、吉川弘之日本学術会議会長に「エネルギーと学問」と題して特別講演をしていただくことができた。午後には共同利用成果の発表とともに施設教官により「21世紀と原子力発電」「超臨界圧軽水冷却炉の概念」の講演が行われ、その後の懇親会も含めて産業界や大学、研究期間からの参加者と意見の交換が行われた。

平成11年9月30日に本施設から約5km離れた東海村のJCOで臨界事故が生じた。当日は東大システム量子工学科学生の原子炉実習中であったが事故発生の報により中断し学生を帰宅させた。環境モニタは風向のかわった夜になってバックグラウンドの数倍程度のピークを4回観測したが、これは過去に中国が大気中核実験をした時に観測したのと同程度であった。この事故以降、防災対策、地元市町村との協定、核燃料物質の規制等が強化され、少ない職員数でこれらに懸命に対応しているのが実情である。本施設を支えている教職員数は原子力研究総合センターの重照射研究設備関係者も含めて全体で46名でうち17名は非常勤の職員である。一方平成11年度に本施設の研究部門に所属した学生は博士課程21名、修士課程24名、卒論生8名の53名であった(平成12年3月3日現在)。また、うち外国人留学生は9名で国際化の傾向も顕著である。さらに、平成9年より発足した機関研究員制度を利用して8名が研究にいそしんでおりうち5名は外国人研究者である。平成10年度から採択された未来開拓事業でも3名のリサーチ・アソシエイトが研究に参加している。その他、非常勤講師、受託研究員の各2名を合わせると、総勢121名が日夜活動していることになる。本年報では教職員の研究成果とともにこれらの学生の研究活動および学位論文、卒業論文の内容についてもとりまとめている。

最後になったが、これらの活動は文部省、工学系研究科長、評議員、協議員をはじめとする工学系研究科の先生方、運営委員会や実験計画委員会の先生方、ならびに日本原子力研究所の各位のご高配、ご厚情、ご指導の賜であり、ここに厚く御礼申し上げる。