教授 | 宮 健三 |
助教授 | 出町 和之 |
助手 | 内一 哲哉 |
研究機関研究員 | プレダ ガブリエル、フローリン デービット |
大学院生 | |
博士課程3年 | ラバラ マイケル、程 衛英、ミハラケ オビドュ |
2年 | 高瀬 健太郎 |
1年 | 松江 仁 |
修士課程2年 | 清水 良太、杉山 隆浩、 高屋 茂、遊佐 訓孝 |
1年 | 松浦 貴洋、三浦 章 |
学部学生4年 | 中野 牧人 |
高温超電導バルクを用いた磁気力浮上系はフライホイールなどの工学的応用の実現に向けて研究が行われている。フライホイール回転時に発生する交流磁場は浮上力劣化を引き起こし、その実現化に対する大きな障壁となっている。本研究ではY系高温超電導バルクと永久磁石からなる浮上系についての交流磁場下における浮上力劣化特性の測定を実施した。得られた劣化特性は数値シミュレーションによる計算結果と比較され良い一致を得た。浮上力劣化特性の改善を計るべく重イオン照射によるバルク表面へのピンニングセンタ導入を提案した。実際に照射実験、浮上力劣化特性の測定実験を実施し、その浮上力劣化低減に対する有効性を示した。さらに臨界電流密度測定手法としてECT(EddyCurrent Testing)を用いることを提案し、測定実験によりその適用可能性を示した。
これまでに当研究室にて開発されてきた磁束動力学法(FD法)に、格子ガスオートマトン法の取り扱いを適用し計算の高速化を図った。改良されたコードを用いて、重イオン照射後のBSCCO単結晶における臨界電流密度を評価した結果、計算値と実験値に良い一致がみられ、本コードの妥当性が示された。本コードを用いて、アキシャル型超電導磁気軸受における回転損失の不整磁場振幅、不整磁場波長、直流磁場成分に対する依存性を定量的に評価した。また、超電導体の重イオン照射による回転損失の改善について、その有効性が本コードによる解析により示された。
高温超電導線材実用化の可能性を探るため、高温超電導体の中で実用化に近いとされるBi-2223高温超電導線材に着目し、その電磁及び機械的特性を評価した。Bi-2223線材の場合、線材の諸特性の中でも特に重要である臨界電流密度は、複雑な温度、印加磁場等の様々なパラメータに対する依存性をもつ。これは、線材導体部の結晶構造及び磁束量子の準2次元的な振舞いという中間視的物理に起因するものである。そこで、特性評価を適切に行うため、実験的評価とともに超電導線材の中間視的観点に立脚した理論的考察を併せて行った。
本研究の結論は、
本研究では、非CuO_2面に結晶場の乱れなどによる電荷の不均一性があった場合に生じるポテンシャル場が、超電導性に重要であるCuO_2面上の電子に及ぼす影響の評価を行った。高温超電導体の物理特性を記述できるとして研究されているいくつかのモデルの中からt-Jモデルに着目し、t-JハミルトニアンにCuO_2面に生じたポテンシャル場を表す項を摂動として加えた新しいハミルトニアンを提案した。このハミルトニアンの基底状態から50個の固有エネルギー及び固有状態を調べたところ、摂動を加えることにより系の並進対称性がなくなり固有エネルギーの縮退が解ける様子が確認された。また超電導性の目安のひとつである正孔間の束縛エネルギーを、様々な形のポテンシャル場について計算したところ、全ての場合について束縛エネルギーが小さくなることが明らかになった。これはポテンシャル場が超電導性に不利に働く可能性があることを示し、応用上の観点から非CuO_2面における結晶場の乱れは出来る限り避けるべきであることがわかった。
SUS304のように機器の構造部材として用いられる金属材料のなかには、通常非磁性体であるが供用中の外荷重や変形、周囲環境の影響により応力集中部においてマルテンサイト変態を起こし、強磁性を示すようになるものがある。このことから、磁束密度分布の逆解析を行ない金属材料内部の磁化分布を再構成することによって、疲労などによる劣化、損傷の程度を推定することが可能であると考えられる。この新しい劣化診断手法が従来の方法より優れている点は、き裂ができる前の段階で非破壊的に材料劣化を調べることができるところにある。本研究では、ニューラルネットワークを用いて磁束密度分布から磁化分布再構成を行なう手法を開発した。さらに、疲労損傷が与えられたSUS304試験片の磁束密度測定結果から磁化分布の再構成を行った。磁化分布再構成結果からき裂および切断面の一部で磁化している様子が確認できた。また得られた磁化分布の妥当性を確かめるために、磁化分布再構成結果から求めた磁束密度分布と測定データとの比較をおこなったが、両者は良く一致した。今回はき裂が導入された試験片について磁化分布の再構成を行なったが、本手法はき裂発生以前においても有効な手段となるであろうと思われる。
原子力発電設備等の保全活動の最適化のためには、まず保全活動や保全の対象となるシステムの分析が必要である。そこで、本研究では、以下の2つのシステムに着目して、保全に有用な情報を抽出することを試みた。
高温超電導コイルによりプラズマ不安定性が抑制されれば、高非円形度のプラズマ配位が可能となり、炉心性能の向上と炉の小型化が期待できる。一方、現在ITERの低コストオプション(RCO)の検討作業が進められ、ITER小型化の可能性が追求されている。この現状を踏まえ、本項目では非円形度、及びプラズマ大半径を除きRCOと同じ条件を用いて設計を行い、高温超電導コイルの導入によりさらなる小型化が可能であるかを検討した。新たに開発した安定性解析コードを用いて炉心設計を行った結果、高温超電導コイルを導入することでより大半径5mという小型な(RCO大半径は約6m)高効率炉の設計が可能であることが示された。
通常欠陥は特定の部分に集中して発生するため、その信号はきわめて複雑なものとなる。このような問題に対処すべく、近年新たに4センサー型のプローブが開発されたが、本研究においてはこのプローブの特性を定量的に評価するため、A-φ解析コードを用いた順問題解析を行った。その結果、4センサープローブは従来のパンケーキプローブに比べて分解能が優れていること、また複数欠陥が存在する場合には、パンケーキ、4センサーいずれのプローブにおいてはその信号は各々の欠陥によるものの単純な重ねあわせにもならないことなどが示された。また、従来の解析コードはその解析体系が比較的単純な形状に限られていたが、今回新たに改良を加えることによって、支持板などを含む領域での解析、さらに磁性体の取り扱いをもが可能となった。
近年の目覚しい研究の発展により、渦電流探傷においては人工欠陥に対する再構成手法はほぼ確立されたと言っても過言ではない。しかしながら、渦電流探傷法における最終的な目標は蒸気発生器に発生した欠陥、すなわち自然欠陥の再構成であり、人工欠陥を対象とするものではない。本研究においては自然欠陥のもつ断面における電気的接触という特徴を考慮し、内部導電率分布を有する欠陥の形状再構成をニューラルネットワークを用いて行う手法を確立した。数値解析解を用いた検証の結果、本手法はたとえ信号に20%もの人工白色雑音が含まれていた場合でも十分な精度の解を与えるということが示された。