UTNL-W-0011J
Section 1.2

1. 大型設備の経過報告

1.2 ライナック経過報告


1.平成11年度末にクライストロン入力用マイクロ波増幅器を、位相安定性を考慮した半導体増幅器に更新した。又、加速管3本専用に冷却装置を設置し、0.01℃以内で温度制御できるようにした。その結果1.5ピコ秒の電子パルスを安定に発生でき、その電荷量の変動を2.7%に抑えることができた。

2.平成12年度は、共同利用研究に8件、施設内利用1件に供された。大きな故障は発生していないが、平成1211月に寿命劣化と思われるサイラトロンの交換とサーキュレーター部の放電が発生し、共同利用(L-1)に迷惑を掛けた。

以下に平成12年度の成果を示す。

1)サブピコ秒パルスラジオリシス実験において、電子ビームとレーザービームの同期精度が数分間で330fs(rms)、数時間で1.7ps(rms)であることを確認した。また、パルスラジオリシス時間分解能が12psであることを確認した。

2)18Lライナックに設置しているフォトカソードRFガンにおいて、1パルス当り7ナノクーロンの電荷量の発生に成功した。この値は、現時点で世界にある銅カソードRFガン装置において最高値である。

3)12TWレーザーを銅に照射して特性X線を発生し、それに同期したレーザー光をGaAs結晶に照射し、ポンプ&プローブ法を用いて結晶格子の動きに起因するX線回折像が得られ、50ピコ秒毎の結晶格子の変化を示すX線回折像の取得に成功した。

4)12TWレーザーをヘリウムガスに照射させることにより、1MeV以上の電子発生を確認した。

5)12TWレーザーをパラボリックミラーにて、銅板上に集光させたところ、エネルギーが50220keV12価から18価の銅イオン、105/ショットの発生を確認した。また、その銅イオンを銅板に照射したところ、結晶格子に欠陥が生じていることが観測できた。

6)RF-GUNの高輝度化とビーム誘導系を改良するため、RF-GUNカソード面を大気にさらした。それが主原因か不明であるが、RF-GUNの電子発生量子効率が約10分の1に低下してしまった。現在、エージングを行い、量子効率の回復を計っている。

図2 平成12年度ライナック運転計画

表2 平成12年度ライナック共同利用テーマ一覧