UTNL-W-0011J
Section 2.3

2. 研究活動

2.3. ビーム物質相関部門


(1) 構成

教授       勝村 庸介
教授       上坂  充
客員助教授    中島 一久
助教授      柴田 裕実
助手       渡部 貴宏
リサーチアソシエイト    呉 国忠
機関研究員     林  銘章
機関研究員    小林 鉄也
ポスドク     ロイ ヘムカー
秘書        所  清香
秘書       不破 吾子
大学院生
 博士課程 3年 木下 健一、ナスル ハフス
      1年 室屋 裕佐、ワリード ギャリー
 修士課程 2年 奥田 泰之
      1年 中村  啓、深澤  篤、森岡 知美
 学部学生 4年 大久保 猛、羽飼 知佳

(2) 主な研究活動

35MeVライナックとfsレーザーを用いた高時間分解能パルスラジオリシスシステム
勝村 庸介、上坂 充、室屋 裕佐、林 銘章、呉 国忠、渡部 貴宏、小林 鉄也、上田 徹、吉井 康司
High Time-resolved Pulse Radiolysis System by the Combination of a 35MeV Linac and a fs Laser
Y. KATSUMURA,M. UESAKA,Y. MUROYA,M. Lin,G. WU,T. WATANABE,T. KOBAYASHI,T. UEDA,and K. YOSHII

 35MeVライナックとfsレーザーを組み合わせたパルスラジオリシスシステムを組みあげ、その性能評価と実際のパルスラジオリシス実験を実施した。同期ジッターとして2.8psで、fsレーザーは1ps以下であるので、電子線パルス幅が時間分解能を決定することになる。実際、4psの電子線パルスを用いて、2cmセルでは22psの時間分解能を達成した。このシステムはpsからサブ?sの時間領域の観測が簡便にできることが特徴である。このシステムを用いて水中に生成する水和電子を観測し、プロトンとの反応速度、アセトン、S2O8-2、SeO42- と水和電子の先駆体との反応についても測定した。


超臨水のパルスラジオリシス 2 ミ 種々ラジカル挙動の温度依存性
勝村 庸介、呉 国忠、林 銘章、室屋 裕佐、森岡 知美
Pulse Radiolysis Study of Supercritical Water - Observation of Radicals
Y. KATSUMURA,G. WU,M. Lin,Y. MUROYA,and T. Morioka

 超臨界水のパルスラジオリシス実験も世界に先駆けスタートし、超臨界水中の水和電子の存在を世界で始めて報告した。(SCN)2・-、炭酸ラジカルなどの挙動を測定した。室温から400℃までの、超臨界水をも含む広い温度範囲の測定により、ラジカルの吸収スペクトルが温度とラジカルの種類により、大きく変化することを見い出した。(SCN)2・- <--> SCN・+SCN- の平衡定数の温度依存性を評価し、ラジカル挙動を再現するような反応速度定数のセットを整備することが出来た。反応の新しい側面を知ると同時に、従来の考え方の訂正をせまる結果も得られ、理論的に解明すべき新しい現象も観測した。


時間分解X線回折
上坂充、木下健一、大久保猛、ナスルハフス、奥田泰之、小林鉄也、渡部貴宏、吉井康司、上田徹
Time-resolved X-ray Diffraction
M. Uesaka, K. Kinoshita, T. Ohkubo, H. Nasr, Okuda, T. Kobayashi, T. Watanabe, K Yoshii, T. Ueda

 12TW 50fsレーザーを用いたポンプ&プローブ法による時間分解X線回折の予備実験を行った。レーザーを銅ターゲットに照射することでピコ秒のレーザープラズマX線パルス(プローブ)を発生させ、GaAs、の半導体単結晶の時間依存X線回折像の取得に成功した。これにより、GaAs表面で起きる熱膨張・音響フォノン(衝撃波)などの超高速現象をピコ秒の時間分解能で取得し、これらが生成される様子の動画像化も行った。


レーザープラズマライナックによる電子ビーム、イオンビーム発生
上坂 充、ナスル ハフス、ロイ ヘムカー、奥田泰之、木下健一、上田徹、吉井康司
Laser Plasma Linac
M. Uesaka, N. Hafz, H. Roy, Y. Okuda, T. Ueda, K. Yoshii

 12TW 50fsレーザーをヘリウム、窒素ガスジェットに照射することによって10fsの極短電子ビームを発生させる数値解析・実験を行った。数値解析では2種類のPIC(Particle in Cell)コードを用い、一本のレーザービームによってプラズマ中に引き起こされる航跡場の砕波を利用した加速手法が用いられた。その結果、レーザーパラメータ・ガス圧などを最適化することによってパルス幅10〜15fs、エネルギー数MeVの電子ビーム発生を確認した。また、実験の結果、イメージングプレートによって電子ビームの像を取得、ファラデーカップによる電荷量は14pC /bunchという結果を得た。更に個体照射によるイオン発生実験を行った結果、+12〜+18の銅イオンが数百keVまで加速されたことを観測した。


フェムト秒電子ビーム計測
上坂充、渡部貴宏、小林鉄也、木下健一、ナスルハスフ、室屋裕佐、上田徹、吉井康司
Generation and Measurement of Femtosecond Electron Beam
M. Uesaka, T. Watanabe, T. Kobayashi, K. Kinoshita, N. Hafz, Y. Sugahara, T. Ueda, K. Yoshii

 従来から用いられてきたフェムト秒ストリークカメラの代替法の開発として、ここ数年コヒーレント放射を利用した計測手法の確立を行ってきたが、本年度はインコヒーレント放射のノイズを統計的に処理することによりパルス計測を行う手法(フラクチュエーション法)の実験・シミュレーションを行った。その結果、当施設では電子バンチの横方向エミッタンスがインコヒーレント放射の回折限界よりもずっと大きいためにおきるフラクチュエーションの減少が無視できないことが判明した。