1.構成
管理部長 上坂 充 教授
管理部員 吉井 康司 助手、上田 徹 技術専門官
小林 鉄也 研究機関研究員
2.主な研究活動
(1)フォトカソード高周波電子銃(RF-Gun)の性能試験
0.3TWレーザーシステムを用い、銅カソードで7nC (QE=1.4 x 10-4)もの大電荷量ビームが得られた。これはRF-Gunの世界記録である。真空システムを強化することにより、量子効率に向上がみられ、高い電荷量を得られたことが分かった。2年半以上の運転において、銅カソードに劣化は見られず、その耐久性が実施された。ただし、表面を見たところ数多くの小さな穴がある。しかし、今のところ問題は起きていない。
(2)
サブピコ秒パルスラジオリシスシステムの開発
加速管3本用の独立冷却装置を設置し、0.01℃以内で温度制御できるようになった。その結果、1.5ピコ秒の電子パルスを安定に発生でき、その電荷量の変動を2.7%に抑えることができた。その結果、サブピコ秒パルスラジオリシス実験において、電子ビームとレーザービームの同期精度が数分間で330fs(rms)、数時間で1.7ps(rms)であることを確認した。また、パルスラジオリシス時間分解能が12psであることを確認した。
(3)
12TW 50fsレーザーを用いたピコ秒時間分解能X線回折動画像観測実験
12TW 50fsレーザーおよびパラボリックミラーを導入しレーザープラズマX線発生実験を行った。物質の極短時間領域における動的挙動解明のための手法の一つとして、ピコ秒時間分解X線回折法の研究を行った。これは、超短パルスレーザーをポンプ光、極短X線パルスをプローブ光として、ポンプ光により結晶に誘起した過渡的変化の情報をX線回折像として取得する方法であり、これによって熱膨張や格子振動など結晶のピコ秒時間領域における動的挙動の直接的な観測が可能となる。その結果、超短パルスレーザー照射による過渡変化誘起後のGaAs(111)からのピコ秒領域におけるX線回折像の変化の取得に成功した。
(4)RFフォトカソードXバンドリニアックの設計研究
加速器を小型化するために、Xバンドリニアックを用いフェムト秒のビームの発生について設計を進めている。例えば、熱電子銃とSHBを2本(加速とエネルギー変調)のXバンド加速管、アークタイプの磁気パルス圧縮装置で100(fsec)のビーム発生が可能であるというシュミレーション結果が得られた。また、SバンドRF電子銃と2本のXバンド加速管のシステムについても検討を行った。検討が進むに従い、構成機器が減少しシステムは単純化している。さらに、単純化、小型化を目指し、フォトカソードXバンドRF電子銃と1本のXバンド加速管、シケインタイプの磁気パルス圧縮装置から構成されるシステムの検討を行った。ビームシュミレーション結果、150fsの電子ビーム発生の可能性が示された。
(5)
レーザープラズマイオン発生の研究
フェムト秒テラワットレーザーを用いて、フェムト秒レーザーパルスを固体ターゲットに照射することにより、クーロン爆発および熱電子電場を誘導し、高エネルギーイオンビームを生成計測する。12TW50fsレーザーを銅固体ターゲットに数十μmにフォーカス照射して50〜220keVの銅イオンを105個/ショット観測した。なお、この研究は発生させた短パルスイオンの金属ターゲットに照射しての極短時間分解能をもったカスケード損傷観察実験の基礎研究である。
(6)
レーザープラズマ電子線発生の研究
フェムト秒テラワットレーザーを用いて、フェムト秒レーザーパルスを気体ターゲットに照射することにより、クーロン爆発および熱電子電場を誘導し、高エネルギー電子ビームを生成計測する。気体としては、ヘリウムガスと窒素ガスを用い、フラシュガスジェットとレーザービームを時間的、空間的に同期させて、ガスに照射し電子発生実験を行った。シュミレーション結果では50MeVの電子の発生が推定されているが、実験では、数MeV,14pC/ショットを確認した。さらなる詳細な実験的検証と数値解析を実施中である。