3−1 教育・人材育成

 原子力が人類の福祉に貢献するという初期の目的を達成するためには、色々な側面からの教育・人材育成が必要である。そして既に述べたように、原子力教育の基本は研究用原子炉を道具とすることから始まる。これを用いて 原子炉の動作原理を実体験をもって理解 することが肝要である。このことがひいては原子力の安全問題に関する認識を高め、安全な原子力社会を担保するのである。1999年9月に起こったJCOの臨界事故は、不幸な経験をもってこの 教育の不在 を証明したことは良く認識されているところである。

 この教育は、原子力の専門家や従事者及びそのような職業に従事しようとする人たち(学生)に対して当然必要である。それも最初の教育だけではなく、自動車の免許更新のように、適当な年数をおいて再教育が行われることが必要である。フランスでは、原子力産業従事者に対する更新教育を5年間ごとに研究炉施設で行っているが、日本では最初の教育さえも研究炉で実地に行うことが少ない。例えば、日本の原子力発電所のオペレータ教育は社内の教育訓練プログラムによって運転シミュレータを使って行われている。巨大なシステムであるだけに、シミュレータによる訓練は必須のものになることは否定できない。しかし、よって研究炉による教育は不用とすると、実体験に基づく知識を持たない従事者ばかりになって、原子力社会の安全を担保するにはかなり心許ない。

 研究炉における教育は、専門家と国民のインターフェイスに位置する人たちにも必要である。例えば、国民に代行して原子炉施設を規制する 行政担当官 には相当の知識と経験を持って臨んでもらわなくてはならない。これまで原子力施設の規制では前例主義と過剰規制が目立っているが、その背景には行政担当官の自信の無さがあることがつとに指摘されている。米国の原子力規制局(NRC)には原子力に通じた専門担当官を、それも発電炉担当とは異なったグループとして、置いているし、ヨーロッパでは政府の役人が研究炉施設で教育を受けている。さらに、 情報媒体に携わる人 たちも正しい知識を持つために、研究炉で教育を受けるべきであろう。

 研究炉はまた、一般の人たちに対する教育の道具としても重要である。そしてこの目的にはTRIGA型炉程度以下の小型炉が打ってつけと云える。欧米では研究炉を、 科学を一般の人たちに伝える道具 として広く公開する努力がされているが、日本はここでも遅れをとっていると云わざるを得ない。

(以上を表にまとめたものがあります。)

 

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