1.7 放射線の管理

大量の放射線の障害の恐ろしさは明らかです。しかし、一方で私たちは少しの放射線を絶え間なく自然に浴びているのです。

それならば、放射線はどれだけあびることが許されるのでしょうか?これはとても難しい問題です。そこで、これまでは“少しでも放射線をあびることがあれば、あびた量に応じて危険がある”と考えるのが一般的でした。他に考えようがなかったし、そのように考えることが一番安全だと思われたからです。

こうして、”あびる放射線の量を限りなくゼロに近くする”ように原子力や放射線に関する施設の放射線管理についての規準が設けられています。それによれば、

原子力施設の中で働く人は 最大でも年間 50 ミリシーベルト
周辺の公衆は 最大でも年間 1 ミリシーベルト

しか浴びないように、施設を設計し、管理するように決められています。

実際の管理ではこれよりも更に低い基準を設定することが多いのですが、自然のままでも年間数ミリシーベルト浴びること、そして、放射線診断や治療によってより多くの放射線照射を受けることからみると、この規準はとても厳しいものだということがわかるでしょう。


ところで、上記の線量の基準は通常”許容線量”と呼ばれていますが、誤解されやすい言葉です。これはあたかも、”これ以上曝びることが許されない線量”のように響きます。事実そのように誤解して、1ミリシーベルトを超えて放射線を曝びることは極めて重大なことのように喧伝する人がいます。

許容線量の正しい理解 は”原子力の事業所が従業員や周辺の公衆に上記線量基準を超えて被曝を与えるような施設の建設および操業することは、許容されない” というものです。 この基準を超える操業をする事業所は厳しく規制されなくてはなりません。一方従業員や周辺の公衆は、この基準によって十分安全が確保されているので、仮に事故等によってこの線量を上回ることがあっても、それが直ちに健康上の問題になるということではないのです。”許容線量”は”危険ライン”を定めたものではありません。

許容線量の間違った理解の例として、国際航空便での宇宙線による被曝の問題があります。成田ーニューヨーク間の1回のフライトで曝びる宇宙線の量は 0.2 ミリシーベルト(自然の放射能のページにありましたね)ですから、年間2.5往復以上する乗務員やコスモポリタンは、1ミリシーベルトの許容線量に引っかかるという議論です。この議論のどこが変か、もうお分かりでしょう。

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