半減期を利用する

Sr-90の半減期は28年ですから、その放射能が半分になったとすれば、それは28年経過したことを示します。このような放射能の半減期を利用して物の年齢を決めることが出来るます。

具体的な例を見てみましょう。自然界にあるC-14は宇宙線の中の中性子が空気の窒素をたたくことによって出来ますが、これは物質の循環と食物連鎖の中で生物の身体に絶え間なく取り込まれて、その結果炭素の中には常に一定の量のC-14が含まれていて、炭素1gあたり、毎分15個が壊れてベータ線を出しています。ところで、この炭素を含んだ生物などが死ぬと、炭素の物質循環から切り離されて、 C-14から出てくるベータ線の量は5730年ごとに半減していきます。始め1グラムあたり毎分15個のベータ線を出していたものが、5735年後には7.5個、11470年後には更に半分の3.75個、というふうに減っていきます。ですから、1グラムあたり毎分いくつのベータ線を出すかを測定してやれば、逆に経過した時間がわかるのです。

イタリアのトリノの教会に、キリストの遺骸を包んでいたという言い伝えのある古い布の年齢がこの方法で調べられたことがあります。その結果、この布は600-700年ぐらい昔のもので、キリストの時代の物ではないことが明らかにされ、伝説が否定されたのは有名です。

このように放射能の半減期を時間の刻み巾の大きい時計と考えて、地質学的な年代や考古学的な年代を測定することは広く行われています。そして時間のスケールに応じて異なる半減期の色々な放射性同位元素が用いられているのです。

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