2.5 医療への放射線の利用

放射線診断

放射能と放射線は診断医療にも広く用いられています。

診断に放射線を用いる典型的な例は、X線を用いた透視です。X線が発見されて直ぐ、X線透視診断に広く使われるようになりました。マリー・キュリーの娘でやはりノーベル賞をもらった イレーヌ・キュリーが、第一次大戦中、X線装置を用いて従軍したことは有名です。また、胸部X線集団検診によって肺結核を追放することにも威力を発揮しましたし、今でも日本人に多い胃ガンを早期発見するために、バリウムを胃に入れてX線を見やすくして透視診断する方法は無くてはならない手法になっています。

通常のX線透視診断では、X線を一方向からあてます。この方法では、X線の方向から見える部分しか見えません。臓器を立体的に見るためには、X線を色々な方向からあてて透視して、コンピュータで画像合成して立体像を得る方法があります。これは X線CT(CTは、コンピュータ・トモグラフィの略、X線コンピュータ断層撮影法とも云う)と呼ばれています。これはちょうど、展覧会の彫刻を見るのに、ぐるりと回ってあちこちから鑑賞するのに似ています。X線CTは脳腫瘍、脳内出血の診断に威力を発揮します。

透視以外の放射線の使い方では、特定の器官や病巣に集まりやすい化合物に放射能を持たせて、体外に出てくる放射線から病巣の場所や大きさ、形を知る方法があります。この方法を使うと人体を切開せずに癌細胞の場所を調べることが出来、患者に苦痛を与えることもほとんどありません。

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